「もっと」の先にあるものとは…

コーチングの世界では、「コンフォートゾーンを抜けよう」という言葉をよく耳にします。
現状に留まるのではなく、一歩踏み出すことで新しい可能性が開ける。
そんな考え方は、多くの人の背中を押してきました。

私自身もその言葉に導かれ、これまでいくつもの挑戦を重ねてきました。
できないと思っていたことに挑み、自分の可能性を広げていく感覚は、たしかに心地よいものでもありました。

けれど、あるとき、ふと立ち止まってみたんです。

「このもっとは、一体どこまで続くのだろう?」
「私は本当に、まだ見ぬどこかに行きたいのだろうか?」

どこかで「もっと成長しなければ」という思考が、自分を追い立て続けていることに気づきました。
そして同時に、「今ここ」を味わう余裕さえなくなっていたことに気付いたのです。

成長への欲求は、どこから来ているのか

コーチングでは、「人は無意識のプログラムに大きく影響を受けている」と考えます。
これまでの経験や環境によって形成された「ビリーフ(信念)」が、私たちの行動や思考の前提になっているのです。

「もっと頑張らないと価値がない」
「何かを成し遂げてはじめて認められる」

そんなビリーフが根底にあると、どれだけ達成しても「まだ足りない」と感じてしまうのは自然なこと。
このサイクルに気づかないまま走り続けると、やがて心も体も疲弊してしまいます。

では、本当の意味で自分を満たす成長とは、どこにあるのでしょうか?


成長は「もっと頑張る」ことではない

コーチングの視点で見れば、成長とは単なる目標達成ではありません。
「いまここにある自分」と向き合い、自分自身にとっての自然体でいられる状態を再定義していくこと。
それこそが、長期的で本質的な変化のはじまりなのです。

たとえば、こんな問いを自分に投げかけてみてください。

  • 私は何をしているときに心が安らぎ、満たされているだろう?
  • その時間を、自分にどれくらい許せているだろう?
  • いまの私は「達成」ばかりを目的にしていないだろうか?

この問いかけは、自分の行動の“出発点”を見直すプロセスです。
努力や挑戦が悪いわけではありません。
ただ、「何のためにそれをしているのか?」に気づいていることが大切なのです。


味わうことも、ひとつの大切な成長

人は、安心感や満足感を感じているときにこそ、本来の力を発揮できます。
これは、脳の「ゴール側の臨場感」が高まる状態とも言われ、未来へのポジティブなイメージが自然に描けるときです。

つまり、「今すでにあるものに目を向けて味わう」ことは、未来への創造力を高めるための土台にもなります。

意外かもしれませんが、目の前の生活を丁寧に味わうことは、成長を止めることではありません。
むしろ、その先の未来をより豊かに描くための、大切なプロセスなのです。


変化は、もっと遠くを目指すことではなく…

「コンフォートゾーンを抜ける」という言葉は、必ずしも「より高い目標に挑戦すること」だけを意味するものではないということ。

自分自身にとっての自然体でいられる状態に気づき、そこに戻っていくこともまた、大切な変化のひとつです。

今週は、あえて「次は何を目指そう?」と考える前に、
「いまの自分は、どんな時間に安らぎを感じているだろう?」と静かに問いかけてみませんか。

変化はいつも、気づくことから始まります。

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